蜃気楼のように

ヤフブ時代の遺留品

午前十時の「灰とダイヤモンド」




この映画、高校生の時「日曜洋画劇場」で観て
鮮烈に印象に残っている映画なのです。
イメージ 1


上の写真もこの下の写真も同じラストシーンからです。
このラストシーン!
何かを求めて出発しようとする主人公がゴミ置場で無残に
死んでゆくこの姿に、当時の私は同じ痛みを感じていました。
今村昌平の「豚と軍艦」で主人公の長門裕之
同様に公衆トイレの便器に顔を突っ込んで「痛いよう」と
呻きながら死んでいった様もまた
一人の若者が世の中の歯車からはじき出されて、滅んでいく
姿にほかならず、どちらも、あまりにも哀しい
青春映画として私の記憶にあるのです。
イメージ 2


「豚と軍艦」の長門裕之
イメージ 6


映画の舞台は第二次大戦、ドイツが無条件降伏した日の
ポーランド 私がポーランドと言う国を知ったのは
小学5年生で、「キュリー夫人」の伝記を読んだ時でした。
かの国は長くロシアの支配下にあり、その後も
ドイツ、ロシアによって占領されて大戦後、解放された
共産党新政府が誕生するも、ロンドン亡命政府(と言うのが
あったらしい)との争いなどが続いたようです。

主人公マチェックはロンドン亡命政府派のテトリストで
ある時、共産党の要人を襲撃するが、間違えて
無関係の労働者を殺してしまったことを知る。
何としても要人を、と彼の宿泊先のホテルで彼の隣室に
部屋を取ることに成功、そしてホテルのバーで、
働くクリスティーナと言う娘と知り合う。
一夜の恋、二人で外へ出てみると雨が降り出し、廃墟のような
教会へ入って雨宿りしながら、墓碑銘を読む二人
「…あるいは灰の底にダイヤモンドが横たわり…」
灰の中のダイヤモンド、この象徴は恋か新しい人生か。
せっかくクリスティーナと言うダイヤモンドを見つけたのに
その教会の納骨室で、自分が殺した人物の遺体をも
みつけてしまうマチェック。
クリスティーナと無理やり別れたマチェックは
暗殺しそこねた要人、シュチューカを狙い
すれ違いざま撃つ、マチェックにしがみついた格好で
崩れ落ちるシュチューカ。彼は生き別れになっている
息子の消息をつかんで会いに行く途中だった。
高校生でこの映画を観た私は、この時、夜空に
花火が上がったのを覚えている。
実は覚えているのはラストシーンと、この花火だけ
だったかもしれない。取り残されたクリスティーナの
事など、その時は考えなかった。
父親をドイツ軍の収容所で亡くし、母親をワルシャワ蜂起で
殺され、天涯孤独の彼女はマチェックが去った後、
ただ虚ろに踊るだけだ。
翌朝、仲間の待つ広場へ向かうと仲間同士のいざこざで
トラックに乗り遅れたマチェックは見回り中の
兵士にぶつかり銃の所持がバレて逃げ出し
発砲されて、広大なごみ置き場で、もがき苦しみながら
ゴミくずの様に息絶えていった…

私が強烈な青春映画と記憶していたこの映画を
午前十時の映画祭で50年近くぶりに観て
ラストのマチェックの苦痛が短いのに驚いたのです。
もっと長かった、そう思っていました。
こんなにもあっさりと彼は死んだのか…
映画の中のセリフで印象的だった会話。

「何故サングラスをしているの?」
「報われない祖国への愛の記念さ」





いつ誰にもらったのか記憶にないのですが、
こんな雑誌(?)を持っています。
「MatKa Joanna Od Aniolow」は「尼僧ヨアンナ」
「Noz W Woozie」は「水の中のナイフ」
「Pasazerka」は「パサジェルカ」
「Prawcliziwy Koiec Wielkiej Wojny」は「戦争の真の終わり」
イメージ 3


余談

40年ほど前、今は交流が全くないのですが、私の古い友人に
I氏と言う人がいまして、皆で映画や芝居や小説やらの
話題でワイワイ盛り上がるグループの一人でしたが、
そのI氏が突然ポーランドへ出向いて、あげく
ポーランドから国外退去を命じられて帰国でしてきて、
そのI氏のお土産が↓

アンジェイ・ワイダ監督らしい。(会ってきたそうです)
イメージ 4


I氏がポーランドに行ったのは、かの国に
自主管理労組「連帯」が出来た頃で
これは「連帯」のバッジ(2×1.5cmくらい)
PRACOWNIKOW と言うのは労働者の事
なんですが、FILMUとあるから
これは映画会社なんでしょうかね、よく分かりません。
他の友人に聞いてみても分かりませんでした。
I氏は(立て板に水)の様にしゃべれる人で
時々、テレビにも出てしゃべっているのです。
イメージ 5