蜃気楼のように

ヤフブ時代の遺留品

タイトルが美しい黒澤映画「一番美しく」

「一番美しく」



黒澤明、監督デビュー二作目の映画。
このタイトルの前ではSMAPも立ち尽くすしかない…
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後に黒澤監督と結婚する主役の矢口陽子
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戦時中に動員され、勤労奉仕する女子挺身隊の話。
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挺身隊を知らない私は予告編を観た時、
若い女性たちのストライキの映画か何かだと思ったが、
戦意高揚のプロパガンダ映画である。
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  工学レンズ工場で勤労奉仕する
  
  女学生たちをドキュメンタリー
  
  タッチで描いた映画で、
  
  出演している女優達を一人一人
  
  見ていると、本当の女学生にしか
  
  見えない

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  みんな、素顔なんだろうか?
        









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でも、こうして見ると、やはり皆、女優顔だ。
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とりわけ美しいこの女性は寮母役の入江たか子
貴族の令嬢から女優になった人で、戦前のトップ女優だとか。
若い娘たちを優しく包む聖母のような存在。
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母の死を知らされても帰郷しようとしないヒロイン
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初期の黒澤作品の常連、名優 志村喬
私、「七人の侍」を観るまで、この人を
ゴジラ映画の博士役専門俳優だと思ってた。
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ウキにも書かれているが、入江たか子溝口健二
確執は有名だ。黒澤と並ぶ巨匠の、溝口健二って
陰湿な性格だったのか…
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後に自分の妻となる女優の、主演映画のタイトル「一番美しく」
黒澤明って、どこまでロマンチストなんや」と思った。
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この映画、黒澤明の作品だから今に残ってるんだと思う。
そうでなかったら、とうに忘れられて消えてるだろう。
戦時中に作られた戦意高揚映画は皆そうだ。
14~25歳までの女性で組織された女子挺身隊の働く姿勢が
美しく(と言うのか)描かれている。
怪我をしても、身内に病人が出ても「追い出さないで。ここで働かせて」
と願い、男子と同じほどの仕事量を希望する女性たち。
ヒロインはそんな同僚たちのリーダー的存在で、一心不乱に働く。
熱があっても「みんなには黙ってて」と懇願する同僚のために仕事を
融通したりして「えこひいきだ」と叩かれても、紛失したレンズを
探し出すためにたった一人で残業したり。後でみんなが事実を知り
反省したり、この綺麗事が美しいのだろうか。
とは言え「一番美しく」と言い切られてしまえば、それはそれで
潔いではないかと。戦時中なのに「一番強く」ではなく
「一番美しく」と言い張ったのはカッコイイ。
素晴らしき日曜日」「わが青春に悔なし」「酔いどれ天使
初期の黒澤映画のタイトルはロマンチックだ。