「網走番外地」のヒューマニズム
「網走番外地」
東映チャンネルの無料放送日に放映していました。
「番外地」シリーズは何本か観たことがあるのですが、
この第一作は初めてでした。
結論から言えば、シリーズ化するほどヒットした理由が分かる
堂々たる(軽やかな)第一作でした。
物語は列車が(あばしり駅)に入ってくる処から始まります。
何人かの囚人が降りてくる。
橘真一もその一人。
シリーズを通して主人公はこの橘真一ですが、
この記事では都合上(健さん)と書かせて頂きます。
他の俳優さんたちも俳優名で。
物静かな老人(嵐寛寿郎)も。
口八丁な田中邦衛も。
女に手の早い待田京介も。
極寒の網走
刑務所、入り口
牢には古参の牢名主、安部徹がいる。
(この安部徹がなかなか良いのです。極悪人でもなく
善人でもない、普通の悪党としての存在感があって)
伝説の大悪党(八人殺しの鬼虎)と兄弟分だったと吹聴している。
娑婆での悪事を牢名主に語る南原宏治
何だか和気あいあい。。。
これ、健さんです。
「娑婆に出て稼いで稼いで稼いでやらあ」と言う邦衛の
物まね、顔真似で邦衛をからかっている場面です。
野外作業 村人が捨てた煙草をみなで廻しで吸ったり、
新入りを助けたために、他の連中から(仮釈放の点稼ぎ)
と言われて、いきがって監視に反抗して、
懲罰牢へ。
そこで独りで思い出すのは、
苦労ばかりかけてきた母親(風見章子)のこと。
健さんと妹を食べさせるために、好きでもない男と再婚した母…
新しい父親はろくでもない男で。
健さんは男を殴って家を飛び出したのだった。
「これ、少ないけど持っていけって、母ちゃんが」
妹と母を残して故郷を捨てる健さん
やがて極道の世界に生きる男に。
傷害罪で懲役刑に。
保護司の丹波哲郎
健さんが模範囚として服役している姿を観て
仮釈放の手続きを取ってやる。
だが牢内では仲間内で脱獄の相談が進んでいた。
仮釈放がダメになる、悩む健さんを救ったのは嵐寛だった。
彼こそ伝説の鬼虎だった。
(俺を救うために命懸けの大芝居を打ってくれた)
嵐寛に感謝する健さんだが、野外での作業の時
脱走が!
大雪原を歩く二人
抱き合う二人(?)
凍死を防ぐために抱き合って暖を取っているところです。
いがみあっているようで。本当は健さんが好きなんじゃないか?
南原は怪我を負わせてしまう。
手錠につながれたままの二人。
線路までやってきて
一か八か、列車に手錠を切断してもらおうと。
賭けに負けて線路内に寝そべったのは健さんの方だが、
手錠が切断したはずみに線路下に落ちて大怪我をした南原。
南原が「おふくろ…」と呻いているのを聞いた健さんは、
彼を放っておけず、助けようとする。
「こいつは俺なんかよりずっと可哀想な奴なんです。
本当は寂しがり屋で弱いくせにカッコばかり付けて、いつも
一人で泣いていたに違いない。俺はどうなっても良い。
こいつを助けて下さい」と言う健さん。
南原も「脱走したのは俺で、奥さんを怪我させたのも
俺です。橘に罪は無い」と。
南原を列車に乗せて(病院へ運ぶため)
とても面白い映画でした。
囚人の一人一人に存在感があって、皆いきいきとしていて
極寒の雪の中、白一色の世界での逃走と追跡と。