蜃気楼のように

ヤフブ時代の遺留品

その男、凶暴につき

センスと凡庸と暴力


現実にクズでカスなクソ男が女性を殴っている場面に
出くわしたことがある。
10年以上前だが、夜7時頃、〇ヶ丘の駅前の
〇そな銀行のそばにあるポストにハガキか何かを
投函するために歩いていく途中に
30前後のクソ男が30前後の女性に殴り掛かり
蹴りつけている現場に遭遇してしまったのだ。
ビックリして足がすくんでしまったのだが、
「女性を助けなきゃ」とは思っても、止める勇気も
気迫も腕力も無い。ただ、銀行の隣に駐車場があり
その隣は交番所だ。「見て見ぬふりをしてるオバハン」
を装って二人の前を通り過ぎて交番へ駈け込もう、
と歩き出した時、向こうから一人の男性と
二人のお巡りさんが走ってきて、クソ男を取り押さえた。
「通報した人がいたんだ」と私は安心して引き返した。
男は見るからにヤクザで、女性は知り合いのようだった。
「有難う、有難う」と泣きながらお巡りさんに礼を
言ってる女性と、「何にもしてへんわ!」と怒鳴るクソ男。
「おねえさん、もう二度とこんなクソ男に関わらないで」
と私は願うけれど、この二人、その後どうなったのか。
現実に暴力を目の当たりにすると体に恐怖が走る。
そんな暴力が横行する映画を。
世界のキタノ、北野武の監督デビュー作

警察署内で拳銃を容疑者(とは言えない段階)に向ける主人公
(「拳銃を使った奴は幸せにはなれない」と北野武は言う…)
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映画は中学生のクソガキどもがホームレスを
襲撃するシーンから始まるのだが、何ともかったるい。
ガキを演じてる少年たちに演技力が無いせいかも
知れないが、このシーンは迫力に乏しい。
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自転車で帰ってゆくクソガキたちの後をつけてた男、
ガキの一人が帰宅した直後に訪問。
ガキをボコボコにして「明日、仲間を連れて出頭しろ」
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私がビートたけしを初めて観たのは「マノン」と言う
映画だった。当時、私はテレビの無い生活をしていたので
その頃の漫才ブームを全く知らなかった。
「マノン」でヒロイン(烏丸せつこ)の兄を演じていたが、
この兄は正体不明の不気味で怖い男なのだ。
お笑いタレントが賑やかしで出ている印象など皆無だった。
荒木一郎が出てるから観た映画なんだけどね)
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勤務する警察署
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署内
ベージュの服の男は警察に厄介になった事があるのか。
右端の黒の背広の男は新入りの刑事。お茶くみ。。。
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「ボコボコにしたんだって?」と我妻に話しかけている
刑事、上田耕一。胡散臭い役が上手い俳優
その隣は元たけし軍団の芹沢名人
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我妻が唯一心を許せる同僚の岩城(平泉成
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新しく赴任してきた署長(佐野史郎
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我妻の暴力行為をいさめる上司たち。
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我妻の妹、灯(川上麻衣子
私は北野武の映画は「HANA-BI」「Dolls」しか見たことが無く
この2作品に登場する女性、岸本加世子と菅野美穂
描き方に私は不満があるのだが、川上麻衣子の描き方も同様。
「絶対、大きな勘違いを押し通してる」と思う。
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麻薬の売人、遠藤憲一 (若い!)
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新入り刑事の菊池(芦川誠
映画の前半、我妻に小突かれたり金をせびられたり、
よくある新入り風で、笑わせるのだが…
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実業家だが裏の顔を持つ仁藤(岸部一徳
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人殺しを厭わない清弘(白竜)
この人を初めて見たのは「スキャンダル」と言う不思議な
ドラマで、トラウマや二重人格に悩むヒロインの大塚寧々を
庇い守る男の役で、そのイメージがずっとあって
ヤクザの役ばかりやってても(極悪)とは思えない、
しかし、この映画ではどうなんだろ。
実は「シナリオ」誌で脚本を読んだことがあって、
その時は10%は人の心がありそうに読めたけど。
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清弘の手下、寺島進(若い!)
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同じく小沢一義(和義)
兄貴の小沢仁志同様、大阪府の松井知事に似てる。
松井知事がこの兄弟に似てるのか。。。
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失踪した夫の身を案じる岩城の妻、音無美紀子
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暴力シーン
刑事を滅多打ちにする男
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「僕、何もしてません」
「何もしてないよな。だったら俺も何もしてないよな」
とクソガキに頭突きをかます我妻
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灯を拉致して暴行、薬漬けにするクズども
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仁藤を射殺する我妻
彼はこの時には刑事職ではない。
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その理由は、同僚の岩城が麻薬の横流しをしていて
それが警察に知られ、自殺に見せて殺されたから。
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「お前が殺したんだろ」と警察署内で清弘に
銃を向ける我妻。その逸脱した行為で免職になってしまう。
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清弘のアジトで彼を撃つ我妻
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清弘の死体のそばで薬漬けにされた妹が、必死で
清弘のポケットを探っている姿を見つめる我妻…
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ここからは印象的なシーン
精神系の病気で入院していた妹の灯が退院して帰り、
祭りの賑わいに加わる兄妹
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岩城の葬儀
(あざといほどに象徴するものが見えている)
岩城の家の周辺、空き地と建築中の家と真新しい岩城の家…
右の空き地では刑事がゴルフの素振りの真似。
ブロックに腰かけて手持無沙汰の我妻
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やって来た霊柩車
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退職した我妻の時間つぶし
どうでも良いような絵の並べ方、安っぽい額縁、
複製画の即売会のよう。こんなものを見ている我妻
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映画館の前
孫文」の看板の影に清弘が隠れていて…
許しがたい暴力が一瞬で描かれる。
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清弘も灯も、そして我妻も死んだ。
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30年ほど前から時々、ある音楽を耳にする。
人を不安にさせるような旋律の。
エリック・サティの「グノシエンヌ」だ。
この映画に使用されたことで有名になった。
映画の全編を通じて流れている。
我妻が陸橋を渡るシーンでも。
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そしてラスト近く、新人刑事の菊池が渡る時も。
ただ、我妻が渡って行きつくのは警察署だが、
菊池は警察署ではない…
このラストが私は気に喰わない。
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私が暴力を目撃した時、警察官が来てくれてホッとした。
警察はまだまだ庶民の安全の拠り所だ。
だから、このラストでは困るのだ。
この終わり方で「ドラマ部分は凡庸だな」と感じてしまった。
ラストのどんでん返しがありきたりすぎて。
プロには撮れない、並みの素人にも撮れない
そんなセンスは十分感じ取れる映画でもあるので、
意外にすんなり観られる映画なのだが、
すんなり出て行く映画でもあった。