蜃気楼のように

ヤフブ時代の遺留品

「総長の首」

中島貞夫のチンピラ哀歌




ジョニー大倉が歌う主題歌「夕陽に走れ」を聴きたくて
1979年の東映作品

映画は雑誌記者、銀子(夏純子)のナレーションで始まる。
浅草の記事を書いている銀子
舞台は昭和10年代の浅草
関東大震災から10数年が経過した頃
イメージ 1


この映画には二つの顔がある。
一つはこんなの。正統派仁侠映画の流れ?
人間関係を説明しておくと。
浅草の花森組の組長、花森(安藤昇
花森組の代貸、大塚(品川隆二)と松井(成田三樹夫
侠友会の代貸だか花森とは兄弟分の有田(鶴田浩二
イメージ 2


もう一つはこんな風
ヤクザ世界の抗争に巻き込まれて破滅してゆく若者たちの姿…
ペンキ屋で働く稔(三浦洋一)、卓(清水健太郎
鉄男(ジョニー大倉) 蛸八と言う芸名を持つ役者の卵、小倉一郎
(足が二本足りないからとタコ六と皆から呼ばれてる)
イメージ 3


敵対する二つの勢力
関東に勢力を広げる侠友会と浅草の花森組
侠友会の新年の挨拶。12月23日が事始めだそうで。
写真が切れましたが、左端に鶴田浩二
その右隣は織本順吉、その隣は河合絃司
総長に挨拶する小池(梅宮辰夫)
イメージ 4


タイトルの(総長)とはこの人の事
侠友会の組長
演じているのは東映のプロデューサー、俊藤浩滋
藤純子のお父さんです。セリフ無し
姐さん役の星野美恵子 この人もセリフは無いのですが
ものすごく雰囲気が出てます。さすが東映
イメージ 5


卓(清水健太郎)の女で客を取らされている朝子(マキノ佐代子)
彼女は関東大震災の災禍で声を失っている。
イメージ 6


自分の女に客を取らせて、その金で遊ぶ卓
イメージ 7


卓が惚れている貸衣装屋の小夜子(池玲子
(脱がない池玲子って、こんなに綺麗です。)
イメージ 8


   その小夜子が心底惚れているのは侠友会の用心棒、木村          演じてるのは、なんと舟木一夫
    この頃の舟木一夫って、ちょっと不遇だったのでは。
イメージ 9


鉄男が夢中になっているのは、
浅草レビューの人気の踊子、ナナ(森下愛子
イメージ 28


ナナの後援会発足の席で、おどける役者志望のタコ六
イメージ 29


侠友会が花森組に揺さぶりをかけてくる。
派手ないで立ちのヤクザは「相棒」の内村刑事部長の片桐竜次
卓と哲夫が稔の手引きで、この侠友会のヤクザを射殺してしまう。
この事で血桜団を率いている一明は花森から
盃を受けることになる。「一明よくやった」と花森
イメージ 10


不良グループ「血桜団」の団長の矢代一明(小池朝雄
ペンキ屋を営んで不良たちに仕事を教えている苦労人
主人公、順二の兄 震災孤児だった。
湯殿で隣に座るのは今から一明を襲う殺し屋、岸田森
樹木希林の前夫。(この人と若い頃の内田裕也って
よく似てると思う。樹木希林の好みのタイプ?)
イメージ 11


卓たちの目の前で一明が殺された。
満州から帰ってきた弟の順二は兄の死に愕然とする。
(映画が始まって30分経ってます。ここで主役登場)
イメージ 12


浅草を取材中の雑誌記者、白崎銀子(夏純子)
姉を死に追いやった順二に憎しみと恋慕の感情を抱いている。
イメージ 13


「順二さん、団長の二代目になって下さい」
「団長の骨だ」皆でかじった。結束の印として。
イメージ 14


花森組の葬式に出席したことで侠友会を破門される有田
兄弟分の丹波田中邦衛)は小池を襲撃する。
小池を守って木村が倒れる。
イメージ 37


この争いを何とか止めなければ。
有田は古いタイプのヤクザだ。
イメージ 15


銀子の手紙を預かってきた男
このルンペン金子信雄のようです。
イメージ 16


出会う順二と銀子
イメージ 33


タコ六は漫才師を目指して先輩と巡業に。
イメージ 17


同じ列車に乗る老いた道化師の男
イメージ 18


彼が熱演しても客は誰一人、彼の芸を見ていない。
「田舎もんが!俺の芸はパリの芸だ!ニューヨークの芸だ!」
たたき割った酒瓶の破片をかみ砕く道化師
タコ六はこの男の、芸人の狂気に衝撃を受ける。
イメージ 19


稔の馴染みの娼婦、浮世が血を吐く。
稔は浮世の借金の証文を燃やして二人で逃げる。
イメージ 20


追っ手が迫ってきたが、銃で追っ払う稔
「二人で満州に行って女郎屋をやろう。儲かるぞ」
浮世が幸せをかみしめた瞬間、小屋が爆破される。
イメージ 21


   銀子が順二の行方を捜して占い師に見てもらうと、
丹波哲郎が。ノンクレジットだったので吃驚
「西、西だな」とだけしゃべってます。
イメージ 30


「小夜ちゃんは死ぬほど惚れてた木村さんが殺されたから
やけを起こしてあんたと懇ろになったんだよ。本当に
あんたは極楽とんぼだね」と、お好み焼き屋の女将(樹木希林
イメージ 31


卓は総長の襲撃を決意する。
独り乗り込んで。
イメージ 34


花森から卓を匿うように言われた大塚は隠れ家に。
「蓄音機とチャールストンのレコード」を希望する卓に
「お前って奴は」と呆れながら揃えてやる大塚。
しかし彼は帰りの電車の中で侠友会に殺される。
イメージ 22


襲撃される有田
鶴田浩二の後ろでしゃがみこんでるのは福本清三
イメージ 36


何もかもが嫌になり自国へ帰る決心をする鉄男
国へ帰る前にナナに会いに行くが、ナナから
「あなた本当は朝鮮…」「言わないでくれ!」
気が付くとナナの首を絞めていた鉄男
警察に追われ(タコ六が警察の拷問で居場所をしゃべってしまう)
射殺される鉄男
イメージ 23


追い詰められてゆく花森組
身の危険を感じた松井がとうとう花森を裏切った。
イメージ 32


「親分(花森)の事はそちらでご自由に」
隠れ家の卓も騙されて車の中で殺される。
イメージ 35



侠友会の小池を撃つつもりで乗り込む順二
勘違いから(助けに来た)花森を撃ってしまう。
イメージ 24


梅宮辰夫の太り得か…
喧嘩を仕掛けてきた方は何事もなく…
白塗りの一団が東京音頭を踊り狂う…
イメージ 25


タコ六は、おかまバーで働いていた。
やがて来る戦争で招集されても、彼は不器用に
しかし、したたかに生き延びるだろう…
イメージ 26


朝子は相変わらず客を取っていた。
おそらく卓の死をまだ知らないのでは
イメージ 38



一度は順二と情を交わした銀子は
一人、うつろな表情で回転木馬に揺られ続ける
イメージ 27



中島貞夫監督って鶴田浩二安藤昇を用いても
ヤクザの上層部よりチンピラを描く方が上手い。
映画協会新人監督賞を取った「893愚連隊」も
ATGで撮った「鉄砲玉の美学」も、そして
監督の作品の中で私が一番好きな「現代やくざ血桜三兄弟」も
すべてチンピラが輝いていた映画
この映画でも一番異彩を放っていたのは、道化師の西村晃
タコ六役の小倉一郎 どうしてもそちらに目が行く。
「現代やくざ…」の撮影中、「監督は自分を撮ってくれない」
菅原文太は薄々感じて他のスタッフに愚痴を言ったとか。
完成してみればこうなった、んじゃなく最初から
やくざの幹部や上層部を描こうとは思っていないみたいだ。
心優しいのに血気盛んな若者たちの、滅びゆく姿に
思いを寄せた映画になっている。
混とんとして収集の付かない部分もある変な映画なんだけど、
私はこの映画が愛おしい。

40年前、大阪の深夜ラジオのDJをやってた阿藤海さんの
番組にジョニー大倉がゲストに来て「映画をロックしています」
と主題歌を紹介していたけれど、どう聴いても演歌…
私はこの歌を録音してずっと聴いていたのです。
今はカセットデッキが無くて聞けなくなってしまったけど、
久し振りに(映画の中でエンディングに歌が流れてきて)
「ああ、やっぱり演歌だ」と懐かしく聴いているのです。

阿久悠、作詞 森田公一、作曲

(前半略)
人の世はいつだって黄昏ばかり
夜明けと思える時が無い
それでも走れ 夕日に走れ
陽が落ちるにはまだ時がある


歌の部分ではないのですが(メロディだけ)