蜃気楼のように

ヤフブ時代の遺留品

ほんの14で死んでゆく…



友人のKさん(美術研究所に通ってる人ね)に
教えてもらった映画。3ヶ月くらい前に観た作品。
今日、アップです。
14歳で志願して兵士となり、戦場へ赴き
戦死した少年たちを描いた暗い話ではあるけれど、
今井正監督はメリハリのある映画に仕上げている。
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敗戦間近の硫黄島。潜伏する隊に米軍の攻撃が。
壊滅したと思われる島へ米軍が上陸。
倒れている兵士を見て「まだ子供じゃないか」(英語です)
すると、一人の少年兵が、喘ぎながら叫ぶ。
「ノー、アイム ソルジャー!」
ここで映画のタイトルが入る…
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横須賀の海軍兵学校に入団して、
工藤教官の班に振り分けられて、自己紹介する少年たち。
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  主人公格の江波少年。
  父は小学校の校長で、同じ班の
  林少年とは幼なじみ。
  父親が林に兵学校に入る事を
  進めるのを見て、自分も入学する
  父親は後に、自分の教えに疑問を
  持ち、辞職する。





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  会津出身の栗本少年。
  父親も、その親も戦死。名誉な事
  と言う寺の住職の言葉に送られて
  入学してきた。
  父親が戦死した時、人前では
  決して泣かない母が、台所の
  隅で一人泣いていたのを目撃
  している。





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  仕立て屋の父親を嫌っている
  宮本少年。
  父親は「国は貧乏人から何もかも
  奪って、何もしてくれない」と
  行っただけで憲兵に連行されて
  拷問を受けて、足が不自由だ。
  「俺は貧乏が憎い。親父を見返し
  てやる!」





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  両親の死後、伯父の家で育った
  橋本少年。
  たった一人の姉は、伯父一家に
  仕送りするために娼婦になった。










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  少年兵の悲劇を象徴する
  かのような不運を背負った
  林少年。貧農の小作人
  家に生まれた彼は親のため
  少年兵に志願するが、不器用
  でのろまな性格で、何を
  やっても出遅れ、班長
  しごきに会う。が、
  やがて、もっと大きな不幸が
  彼を襲う…
  この印象的な少年を演じた


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    中村まなぶ…

    現在は、名優 中村梅雀
    その人。









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 鬼の工藤。 地井武男
 本当は鬼なんかじゃ
 なかった…
 林が家に送った手紙の
 内容から林家の苦境を
 知り、こっそり自分の
 給料から仕送りするの
 である。後に上層部に
 怪しまれるので、この
 行動は少し軽率だが。





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 仏の教官の吉永(右)
 と、二人の指導の違い
 を冷静に見つめる山中
  
 映画は、この三人の
 教官を悪人としては
 描いていないので、
 ホッとする。






林少年の母。演じているのは荒木一郎の実母の荒木道子
Kさんはこの役に違和感があったとか。ウキで検索したら
荒木道子文学座に入る前は、東大の図書館に勤務していたとか。
荒木道子ってインテリなんやね。貧しい農婦に見えなかった
のは、そのせいかな」とKさん。私は違和感なかったよ(笑)
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江波少年の母親役の山岡久乃
「みんな戦地に送られるけど、学校にいる間は大丈夫なんだね」
と口走ってしまう母心…
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栗本少年の母親役の奈良岡朋子
「自分が死んだら、おふくろはやっぱり、台所の隅で
一人で泣くだろうなあ」と栗本はつぶやいた。
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宮本少年の父親役の三国廉太郎。
「親父は本当は優しい親父なんだ。俺の為に一生懸命に働いてくれてる」
宮本も本当は父親に感謝している。
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面会の日に、弟に会いに来た橋本少年の姉。小川真由美
この役、小川真由美は甚だしくミスキャストだ(と私は思う)
この姉は、もう少し若くて無知で自分(の境遇を)を恥じている
震えているような小娘、と私は想像するので、
強く生きてる大人の女の匂いのする小川真由美では
姉が最後に持つ強さを、最初から持ってしまっているようだ。
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野外演習
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その夜。民家に宿泊する少年たち。
「おら、こんなフカフカの布団に寝るの初めてだ」
ひょっとしたら、林少年の人生で一番楽しい夜だったかも。
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翌日、懐剣を落としてしまった林。
工藤と二人で探すが見つからず
「おまえは宿舎に帰れ。俺が必ずみつけてやるから」
と言う工藤。工藤が懐剣を見つけて宿舎に帰ると
林少年はまだ戻ってきてはいなかった。
彼は農家の納屋で首を吊っていた…
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息子の死を知らされる父と母。
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やがて戦地への配属が決まる少年兵たち。
「彼らは純粋です。死ぬことに誇りを持っています。
彼らをこんな風にしてしまったのは自分の責任です」
林を自殺させてしまった責務からも戦地を志願する工藤。
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(ここで硫黄島での戦闘シーンなどがありますが、画面が暗いために
テレビに向けてカメラを構える私が写り込んで
そりゃ恐ろしいシーンになってますんで、カット。
ついでに数々のしごきのシーンもカット)


この中に林少年は入れてもらえたのだろうか?
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この映画に登場する三人の母親像。生きて帰ってきてほしい、と
叫びたいのを必死でこらえている母親の姿。こんな母親を増やしてはいけない
と言うより、私たちが戦争に巻き込まれるのを阻止しなきゃいけない。

今井正監督の映画はおもしろい。暗くても力強く終わるから。
「真昼の暗黒」「青い山脈」「キクとイサム」「婉と言う女」 etc

この今井監督の作品に、よく制作者の一人として名を
連ねている内山義重と言う人は、私がその著書を愛読している
哲学者の内山節氏の父親なのだそうで。(内山氏の著書で知った)
内山さんの著書は読みやすいのでお奨めです。